タイの「ナンプラー」、ベトナムの「ニョクマム」、中国の「蝦醤(シャージャン)」(エビペースト)や「オイスターソース」、そして日本の「しょっつる」「いしる」等、塩漬けした魚介類を寝かせて作る醗酵調味料は、東アジアの食文化の特徴のひとつです。エスニック料理の人気の高さは、魚介の「うま味」が世界中の人々の味覚を虜にしたゆえんでしょう。大豆醗酵調味料の醤油では出せない魚介エキスの風味は、加熱して使うと生臭さが消え定番の家庭料理がひと味深く仕上がります。肉や魚に塗りグリル料理に、豚肉のしょうが焼きの下味に、鍋や吸い物の仕上げにと、何種類かの魚醤は裏技アイテムとして私の台所の頼もしい存在になっています。
鮭の魚醤のクセのない味に「魚臭い魚醤」のイメージがなくなったので、ほかの魚醤も味わってみようと思い立った。そこで、どのような種類があるのか調べていくと、醤油のルーツが見えてきた。今や、メイド・イン・ジャパンの調味料として世界各国で愛されている醤油は、味の濃淡はあっても大豆と小麦を原料にした発酵調味料であることに変わりはない。しかし、醤油の原形である「醤(ひしお)」には、肉で作る「肉醤(ししびしお)」、魚介で作る「魚醤(うおびしお)」、穀物で作る「穀醤(こくびしお)」、野菜や果物で作る「草醤(くさびしお)」の4種類があったのだ。古代中国では肉醤や魚醤が用いられていたと思われるが、やがて穀醤が主流になり、室町時代の日本で醤油が誕生したということだ。
中華料理店ではリクエストもOKだった。そこで、好物の五目焼きそばを魚醤風味で注文すると、コクがあって味の濃い焼きそばが出てきた。魚醤は料理を選ばない調味料なので、扱っている店に行ったら試しに魚醤バージョンにできるか聞いてみるといいだろう。いつもの定番料理が一味違ったコクを醸し出すに違いない。