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LA BUONA VITA 宮崎里恵のおいしい出会い
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第10話 魅惑の調味料“魚醤”

 タイの「ナンプラー」、ベトナムの「ニョクマム」、中国の「蝦醤(シャージャン)」(エビペースト)や「オイスターソース」、そして日本の「しょっつる」「いしる」等、塩漬けした魚介類を寝かせて作る醗酵調味料は、東アジアの食文化の特徴のひとつです。エスニック料理の人気の高さは、魚介の「うま味」が世界中の人々の味覚を虜にしたゆえんでしょう。大豆醗酵調味料の醤油では出せない魚介エキスの風味は、加熱して使うと生臭さが消え定番の家庭料理がひと味深く仕上がります。肉や魚に塗りグリル料理に、豚肉のしょうが焼きの下味に、鍋や吸い物の仕上げにと、何種類かの魚醤は裏技アイテムとして私の台所の頼もしい存在になっています。

旅先で地元の魚醤に出会うこともあります。イタリア・ナポリ近辺には古代ローマ時代から作られている鰯の魚醤「ガルム」があります。ソレント半島で食べたガルムソースのパスタは私にとって初めての味でしたが、その中にアジアの香りを感じました。また、昨年北海道の襟裳岬で出会った鮭の魚醤は、魚醤特有の生臭さがなくまるでリキュールのようでした。
料理研究家 宮崎里恵
レシピ 「秋鮭のチャーハン」はこちら
また一つ 我が家に「新・定番」

鮭の魚醤のクセのない味に「魚臭い魚醤」のイメージがなくなったので、ほかの魚醤も味わってみようと思い立った。そこで、どのような種類があるのか調べていくと、醤油のルーツが見えてきた。今や、メイド・イン・ジャパンの調味料として世界各国で愛されている醤油は、味の濃淡はあっても大豆と小麦を原料にした発酵調味料であることに変わりはない。しかし、醤油の原形である「醤(ひしお)」には、肉で作る「肉醤(ししびしお)」、魚介で作る「魚醤(うおびしお)」、穀物で作る「穀醤(こくびしお)」、野菜や果物で作る「草醤(くさびしお)」の4種類があったのだ。古代中国では肉醤や魚醤が用いられていたと思われるが、やがて穀醤が主流になり、室町時代の日本で醤油が誕生したということだ。

日本の魚醤は、イカの内蔵、イワシ、ハタハタなど、原料の違いによって濃厚なものからあっさり味までそれぞれの特徴があった。

中華料理店ではリクエストもOKだった。そこで、好物の五目焼きそばを魚醤風味で注文すると、コクがあって味の濃い焼きそばが出てきた。魚醤は料理を選ばない調味料なので、扱っている店に行ったら試しに魚醤バージョンにできるか聞いてみるといいだろう。いつもの定番料理が一味違ったコクを醸し出すに違いない。

食べ比べをして、これまで縁の薄かった食品の魅力をまた一つ知った。醤油のような辛さはなく味に“深み”を感じさせる魚醤は、料理にうま味をプラスしたいときのお役立ち調味料として、見事わが家でも定番の仲間入りを果たした。その地方だけの特産品も簡単に入手できるようになった今、時には初めての調味料を食卓に加えて味と話題の広がりを楽しみたいと思う。
ライター 三枝真理(SAIGUSA Mari)
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